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SUCCESS STORY
飲料事業部立上げ秘話

固形物入りの
紙パック飲料をつくれる充填機採用の菰野工場が
飲料業界に革命を起こす?

近い将来、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの飲料コーナーが様変わりするかもしれない。海洋プラスチック問題の解決や温暖化防止を背景に企業が脱プラに取り組むなか、飲料業界においてもゲームチェンジが起きようとしている。その一翼を担うのが、2024年に操業を開始したコスモフーズ菰野工場だ。その立ち上げには、総額で約50億円を投じている。なぜ、立ち上げに踏み切ったのか。そして、どのように立ち上げていったのか。

“脱プラ”の波が押し寄せるなか、
ある機械との出逢いが転機に。

菰野工場立ち上げのきっかけは、2021年にまで遡る。2021年といえば、日本では「プラスチック資源循環促進法」が成立し、EUではプラスチック製の皿やカトラリー、ストロー、コップなどが規制の対象となった年だ。プラスチック製の袋をウミガメがクラゲと見誤って食べてしまう、海岸に大量のプラごみが打ち上げられている…などの映像を目にした人も多いだろう。

少しずつ世の中に脱プラスチックの機運が醸成されていくなか、当時のグループ会社の正和製菓のカップ飲料部門においても、それを横目に見ながら新規事業を模索していたコスモフーズ。ある機械との出会いによって話は大きく進展することになる。

その機械とは、スイスSIG社製の充填機「Smile Small」。当時の日本市場には数少ない固形物入りの紙パック飲料に対応できることが最大の特徴だ。他にもキャップ式とストロー式の選択が可能で、パッケージには色鮮やかなグラビア印刷ができるとあって顧客の商品力にも貢献でき、導入するとなれば日本初となるため話題性においても期待できる。そして何より、コスモフーズがそれまで培ってきた菓子やチルドスイーツの製造ノウハウを活かせることが魅力だった。その見立て通り、後日「Smile Small」の導入とともに新工場建設の構想が発表されるまでにそう時間はかからなかった。

日本初の機械の導入は、
日本初の苦労の連続だった。

しかし、菰野工場の立ち上げは万事スムーズにいったわけではない。何しろ「日本初導入」の機械である。社内はもちろん、国内を見渡してみても経験者がいない。新工場に勤務予定のスタッフたちは、スイスSIG社から派遣されたスタッフの指導のもと、英語と不自然な日本語で書かれたマニュアルを片手にまさにゼロから設備を立ち上げ、操作方法をひとつひとつものにしていった。機械の安定稼働も一筋縄ではいかない。何度も何度もテストを重ねながら、品質基準を満たす生産体制を整えていったのである。

もちろん、苦労したのは工場スタッフだけではない。いざ、工場が竣工し稼働開始となったときに何もつくるものがない、という状況にするわけにはいかない。新工場で生産する製品の獲得に奔走したのが営業スタッフだ。

「苦労しましたね。なにせ、工場も設備もまだないうちから営業しなくてはいけなかったですから。“紙パックで固形物入りの飲料を生産できる”ということでお客さまには興味を持っていただけるものの、具体的に話を詰めていく段階で見せるものがないのはもどかしかったですね。もう“信用”だけでご依頼いただいていました。」

そんなお客さまに安心していただくために知恵も絞った。協力してくれる設備メーカーを探し、企画開発部門のラボを借りてサンプル製造をするなど、誰もが今できることで工夫を重ねながら、製品の仕様を決めていった。そして迎えた2024年の2月。菰野工場は無事に生産を開始したのである。

コスモフーズ菰野工場が、
飲料メーカーの次の一手になる。

菰野工場では現在、1日に約15万本、年間で6000万本以上の紙パックを生産が可能な能力を持つ。毎時2万4000本という生産スピードは、国内最速だという。

稼働開始後、次の柱となる商品を求めて飲料メーカーから多くの引き合いが寄せられている。現状、「Smile Small」の真骨頂である固形物入りの飲料はまだ一部だが、コスモフーズとなら果肉入りや粘度を高めた飲みごたえのある飲料などができるとの認識は広がっているようだ。

また「Smile Small」が生産する紙パック飲料はスリムな独特の形状をしており、鮮やかな印刷ができるため店頭でも目に付く。商品力が高まるだけでなく、パッケージのデザインや印刷に関わるクリエイターにとっても表現の幅が広がるとの声も届いている。

そして、お問い合わせいただくほぼすべての企業の目的のひとつが「脱プラ」だ。日が経つにつれて「Smile Small」導入や新工場立ち上げが間違っていなかったことを確信している。

飲料メーカーのパートナーとして、
紙パック飲料のヒット商品を。

菰野工場には、まだ秘められたポテンシャルがある。年間約6000万本以上の紙パック飲料の生産が可能。2期工事として1ラインを増設し、更に大量生産が可能な体制となる予定だ。さらに新ラインでは、固形物と液体を個別に調合・殺菌できる設備の新規導入を予定しており、それぞれより最適な条件で処理できるようになるため、さらに商品力の高い製品の製造が可能になる。

もちろん、それらの機械を導入するだけでは優れた製品を製造することはできない。誰もが知るヒット商品を生み出すなど、コスモフーズがこれまで培ってきた菓子やデザート、スイーツ類の企画、開発、製造の実績や知見があるからこそ、その性能を最大限に活かせると言える。飲料メーカーのパートナーとして、脱プラスチックの追い風を受けながら、紙パック飲料のヒット商品を生み出す日もそう遠くないかもしれない。

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